SemiAnalysis創業者のDylan Patel氏は、OpenAIとAnthropicが計算資源(FLOPs)を収益化する能力の差によって他社を上回る価格で計算資源を買い占め続け、このトレンドが続けば2028年末までに世界で使用可能な計算資源の大半を2社だけで支配しうると分析した。すでに契約・締結済みの分だけで、2027年には両社が新規の計算資源の40〜50%を占める見込みだとも述べている。独自にモデルを訓練しようとする新興ラボや、長期の計算資源計画を立てる必要がある企業にとって、含意は具体的だ——フロンティア級の計算資源へのアクセスが2社に集中していくなら、後発組は早期の複数年契約か、オープンウェイトモデル・代替チップへの依存度を引き上げる判断を、遅かれ早かれ迫られることになる。Anthropicが年間収益90億ドル未満の段階で500億ドル規模のインフラ負債を組成できていた事例や、Nvidiaが資産運用大手6社と500億ドル超のAIインフラ金融化プラットフォームを構築する動きも踏まえると、この分析が指し示すのは、計算資源の主導権が資金力そのものよりも「FLOPsをどれだけ収益に変換できるか」という収益化力の差で決まりつつあるという構図だ。

何が起きたか

Dwarkesh Patel氏が配信するDwarkesh Podcastは2026年8月25日、SemiAnalysis創業者Dylan Patel氏(聞き手のDwarkesh Patel氏とは別人)をゲストに招いたエピソードを公開した。エピソードの副題は「Anthropic & OpenAI will have most of the world's compute by 2028」で、番組内でDylan Patel氏は次のように述べている。

「2028年末に近づく頃には——このトレンドが続くなら、そしてそれを止めるものは何も見当たらないのだが——両社だけで世界の使用可能な計算資源の大半を支配することになるだろう」("By the time you're towards the end of 2028 — if this trend continues, and I see nothing that's stopping it — you've got them just controlling most of the usable flops in the world on their own.")

根拠として挙げたのは、両社が「計算資源をより上手く収益化できるため、他社を買い負かせる」("They can monetize compute better and thus outbid everyone")という点だ。

数字で見る

Patel氏は分析の裏付けとして、次のような具体的な数字を挙げている。

  • 2027年の新規計算資源シェア: 2026年時点で既に契約・締結済みの分だけでも、来年(2027年)はAnthropicとOpenAIが新規計算資源の40〜50%を占める見込み("Anthropic and OpenAI are taking as much as 40% to 50% of compute next year.")
  • AI設備投資(capex)の拡大: 2026年時点で1兆ドルをやや超える規模、2028年には2兆ドルを超える見通し("We're at a little bit over a trillion dollars of CapEx this year. As we go out into '28, it's going to be more than $2 trillion.")
  • 業界全体の与信拡大と金利上昇リスク: AI業界全体でのエコシステム規模の与信(credit)拡大——5兆ドル規模との言及——が金利上昇を招きうる("$5 trillion of credit being raised across the whole ecosystem does make interest rates go up.")

こうした力学の帰結として、Patel氏は「あらゆる力が中央集権化へと向かっている」("Every force is screeching towards centralization.")と総括した。

背景

Patel氏の分析は単独の思いつきではなく、これまで個別に報じられてきた一連の資金調達・インフラ投資の動きと符合する。Anthropicは2025年11月、当時の年間収益(年率換算)が90億ドル未満だった段階で500億ドル規模の米国計算資源インフラ投資計画を発表しており、その多くは収益が急増する前の2026年初頭に組成された負債調達で賄われていた。Nvidiaも2026年8月、資産運用大手6社(Apollo・BlackRock・Blackstone・Brookfield・Goldman Sachs・KKR)と提携し、500億ドル超の第三者資本をAIインフラ構築に動員する計画を発表している。計算資源そのものが機関投資家向けの新しい投資対象資産クラスとして扱われ始めている中で、Patel氏の分析は、これら個別の動きを「FLOPsを収益化する力の差が業界の一段の集中化を促す経済的圧力になっている」という一つの構図で束ねるものだ。

ただし、この分析はDylan Patel氏個人の予測であり、SemiAnalysisの独自試算に基づくものである点には留意が必要だ。40〜50%・2兆ドル・5兆ドルといった数値は、いずれも今後の実績によって検証されるべき予測であり、確定した事実ではない。

なぜ重要か

この分析が示すのは、計算資源をめぐる競争の勝敗が、単純な資金力の大小ではなく「FLOPsをどれだけ収益に変換できるか」という収益化力の差で決まりつつあるという構図だ。フロンティア級の計算資源へのアクセスが2社に集中していくなら、独自にモデルを訓練する新興ラボやエンタープライズは、計算資源確保の交渉力で不利になっていく。長期契約を早期に結ぶか、オープンウェイトモデルや代替チップへの依存度を高めるかという判断を、遅かれ早かれ迫られることになる。

読者が注視すべき「本当の問い」は、この集中化が計算資源の主導権をめぐる話にとどまらず、業界全体の与信拡大(5兆ドル規模との言及)がソブリン債務リスク・金利上昇という形で実体経済に波及するかどうかという点にある。年間収益を大きく上回る規模の負債調達がAI業界全体で積み上がる中、Patel氏が指摘する「中央集権化への圧力」は、モデル層の競争構造だけでなく、金融システムの安定性にも関わる問題として、今後の実績で検証されていくことになる。