Metaが検討したのは「AIで少しの人員を減らす」ことではなく、AIネイティブな少人数チームで、従来10〜20人分の仕事を回す構造への転換だった。実際に実行された第1波では、削減後に障害と士気低下が目立った。AIによる人員削減を検討する企業にとって、問われるのは削減できるかどうかではなく、削減後も品質と信頼性を維持できるかどうかだ。これは、AI時代のコスト削減で人員がボトルネックから品質の安全弁へ見直される流れを示す事例である。
何が起きたか
The Pragmatic Engineerの分析によると、Metaは社内コード名「Project OT(Organization Transformation)」のもと、一部チームを最大60%削減する計画を検討していた。構想は「3〜5人の『AI-native』チームで10〜20人分の仕事をこなす」というものだ。
- 第1波(5月): 従業員の10%を解雇した。
- 配置転換: インフラ・製品チームのエンジニアの20〜30%は、AIモデル訓練用のデータラベリング業務へ配置転換された。
- 第2波(11月予定): より大規模な削減が計画されていたが、5月19日夜、第1波の数時間前にZuckerbergが土壇場で見送った。記事は社内文書を根拠に、11月分の計画が中止されたと伝える。
配置転換の中身
一部の要約では、エンジニアが「AI関連トレーニングへ配置転換された」と表現された。これは、エンジニアがAIの研修を受けたという意味ではない。実態は、AIモデルの訓練データを作るラベリング業務への配置転換である。
結果
一次ソースによれば、この再編は士気の低下と一連の「恥ずべき障害」を招いた。具体例として、Instagramの「ゼロ認証パスワードリセット」障害が挙げられている。誰のアカウントでも、元米大統領バラク・オバマ氏のものを含め、乗っ取れる状態だった。
未検証の情報
次の数値は複数の二次報道が伝えているが、一次原文に到達できておらず、未検証である。
- 従業員満足度が74%から55%に低下した。
- 技術・セキュリティインシデントが前年比40%増、対応時間が70%増となった。
- Meta広報が「全社確定計画ではなく、一部チームのシナリオ検討だった」と説明した。
これらは断定の根拠にしていない。Metaが計画の存在を認めたとされる点も、二次報道に基づく。
なぜ重要か
「AIで人員を大幅に減らす」という計画は、構想段階で終わったわけではない。5月に10%の解雇が実行されたが、その後の障害や士気低下を見ると、構想と実運用の間には距離があることが分かる。最終判断を下したのは経営トップ自身で、より大規模な第2波は実施されなかった。
この件は、AIエージェントで開発効率が上がるという期待に対して、品質保証、セキュリティ、運用の責任をどの規模の人員で担うのかという問いを突きつける。