Poolsideが打ち出したのは、単なる新モデルの公開ではなく「西側にも信頼できるオープンウェイトモデルがある」という明確な旗印だ。総パラメータ1180億・アクティブ80億のコーディング特化モデル「Laguna S 2.1」は、エージェント型コーディングを測るTerminal-Bench 2.1で70.2%を記録し、総パラメータ1.6兆のDeepSeek-V4-Pro-Max(64.0%)や5500億のNvidia Nemotron 3 Ultra(56.4%)を上回った——しかも事前学習開始から公開まで9週間足らずである。自前でコーディングエージェントを運用したい開発者にとっては、OpenMDW-1.1という寛容なライセンスの下で即座にセルフホスト・ファインチューニングでき、規模で10倍以上大きい競合モデルに匹敵する性能を持つ選択肢が一つ増えたことを意味する。共同CEOのJason Warnerは公式プレスリリースで「西側は、信頼でき、実行でき、その上に構築できるオープンウェイトモデルを必要としている」と明言しており、Qwen3.8-Max-PreviewやKimi K3など中国系オープンウェイト勢が優勢だった構図に、西側発の対抗軸を具体的な性能数値とともに持ち込んだ格好だ。本当の問いは、この対抗軸が中国勢に伍するペース——Poolside自身も事前学習開始からわずか9週間足らずで公開にこぎつけている——を維持し続けられるかどうかに移る。

何が起きたか

Poolsideは2026年7月21日、コーディング特化のMoE(Mixture-of-Experts)モデル「Laguna S 2.1」を公開した。総パラメータは1180億、そのうち推論時にトークンごとに活性化するのは80億のみという構成だ。最大104万8576トークン(約100万トークン)のコンテキストウィンドウを持ち、thinkingモード・no-thinkingモードの両方に対応する。重みはOpenMDW-1.1ライセンスの下で即日公開された。

仕組み・詳細

モデルは48層で構成され、グローバルアテンション層12とスライディングウィンドウ層36(ウィンドウ幅512)を1:3の比率で組み合わせたハイブリッド構成を採る。ネイティブでreasoningに対応し、enable_thinkingパラメータでリクエスト単位にthinkingの有効・無効を切り替えられる。Poolsideはこの構成を、エージェント的コーディング・長期タスク向けに設計したと説明している。

事前学習は2026年5月22日、4,096台のNvidia H200 GPUを使って開始され、7月21日の公開までおよそ8.6週間(9週間未満)だった。

Poolsideはさらに、最終評価に用いた全トラジェクトリをtrajectories.poolside.aiで公開し、評価の透明性を強調している。アーカイブ自体の実在は確認できるが、個々のトラジェクトリがどの粒度(reasoning step・tool call・shell commandなど)まで記録されているかは今回未確認のままだ。

数字で見る

項目 数値
総パラメータ数 1180億(118B、アクティブ80億)
コンテキストウィンドウ 最大104万8576トークン(約100万)
Terminal-Bench 2.1(thinking有効) 70.2%
Terminal-Bench 2.1(thinking無効) 60.4%
DeepSeek-V4-Pro-Max(1.6兆パラメータ)のスコア 64.0%
Nvidia Nemotron 3 Ultra(5500億パラメータ)のスコア 56.4%
事前学習開始〜公開 2026年5月22日〜7月21日(約8.6週間)
使用GPU Nvidia H200 ×4,096台

背景

今回の公開は、明確なポジショニングを伴う。Poolside共同CEOのJason Warnerは公式プレスリリースで「西側は、信頼でき、実行でき、その上に構築できるオープンウェイトモデルを必要としている」と述べ、プレスリリース本文も「西側はこのカテゴリで競争力あるオープンウェイトの選択肢を欠いてきた」と明記している。比較対象としてTencent Hy3・DeepSeek V4系・Qwen3.7-Maxなど、中国発のオープンウェイトモデルが名指しされている。Kimi K3(Moonshot AI)やQwen3.8-Max-Preview(Alibaba)など中国系モデルの発表が相次いでいた直後の参入だ。

なぜ重要か

Laguna S 2.1が示すのは、パラメータ規模で大きく劣るモデルでも、より大きなモデルにコーディング性能で勝てるという事実だ。1.6兆パラメータのDeepSeek-V4-Pro-Maxや5500億パラメータのNemotron 3 Ultraを、118億パラメータ(アクティブ80億)のモデルが上回った。自社でコーディングエージェントを構築・運用したい開発者にとっては、OpenMDW-1.1ライセンスの下ですぐにセルフホスト・ファインチューニングできる選択肢が、性能面でも実用的な候補になったことを意味する。

同時に、Poolside自身が事前学習開始からわずか9週間足らずで公開にこぎつけたという事実は、一つの問いを浮かび上がらせる——西側発の「信頼できるオープンモデル」という旗印は、中国系ラボに伍する開発ペースを維持できて初めて意味を持つ、という問いだ。