Anthropicが動かしたのは、軽量モデルの性能だけではなく、費用の測り方そのものだ。Claude Haiku 5.5の価格は入力$0.10・出力$0.50(100万トークンあたり、10万トークン以下)で、Haiku 4.5の$1/$5から単価は10分の1になった。さらにHaikuとして初めて、Low〜Maxの5段階のeffort設定を持つ。エージェントを大量に回す開発者にとっては、同じ単価表でも推論レベルを上げるほど1タスクあたりの出力が増え、請求額が変わる。Anthropicはキャッシュ読み出し単価の引き下げでも費用を削っており、モデル選定の物差しは「トークン単価」から「推論レベルを決めた上での1タスク費用」へ移る。これはモデル費用の構造が単価競争の段階を過ぎ、使い方(推論の深さ)で決まる段階に入りつつあるという流れの一部だ。本当の問いは、安いモデルを選ぶかどうかではなく、自分の仕事の1タスクにどの推論レベルでいくら払うのかを測れているか、である。
何が起きたか
Anthropicは2026年10月7日にClaude Haiku 5.5(モデルID claude-haiku-5-5)を公開した。Claude Platform、AWS、Google Cloud、Azureで利用できる。
- 価格: 入力$0.10/出力$0.50/キャッシュ読み出し$0.01(いずれも100万トークンあたり、10万トークン以下)。10万トークンを超えると入力$0.50/出力$2.50/キャッシュ読み出し$0.05で、5倍になる。Haiku 4.5は$1/$5だった。
- effort設定: Anthropicは「our first Haiku-class model to come with an adjustable effort setting」と説明する。段階はLow・Med・High・Xhigh・Maxの5つ。
- Sonnet 5.5のキャッシュ: キャッシュ読み出しが100万トークンあたり$0.20から$0.10へ半減した(Anthropic公式の記述は「Cache reads now cost 50% less」)。エージェント系のコストが約20%下がるという説明はAnthropic自身の主張である。
- 利用枠: Max/Teamプランに月額のAPIクレジット(Max 5xは$100、Max 20xは$200、Teamは最大$500のプール)が付く。公式は「今週展開中」としている。
数字で見る
以下のベンチマークはいずれもAnthropicの自己報告である。
| 指標 | Haiku 5.5 | 比較 |
|---|---|---|
| OSWorld 2.1(offline subset) | 72.4% | Haiku 4.5は15.7% |
| Terminal-Bench 4.0 | 39.2% | Sonnet 5.5は70.6%、GPT-6 Lunaは16.4%、Haiku 4.5は0.0% |
軽量モデルでもコンピュータ操作系の評価が大きく伸びた一方、ターミナル作業ではSonnet 5.5との差が大きく残る。用途によって「Haikuで足りる仕事」と「Sonnetを要する仕事」の境目が分かれる、という読みが数字から導ける。
第三者機関Artificial Analysisは、自社のIntelligence IndexでSonnet 5.5を56点、217モデル中2位と評価している。同ページでは、Index全体で出力トークンが4.2億に上り、出力が非常に多い(very verbose)とも記す。
費用はタスク単位で見る
トークン単価と1タスクあたり費用は別の指標である。出力が多いモデルや推論レベルを上げた設定は、単価が同じでも請求額が増える。
Artificial AnalysisのSonnet 5.5ページには1タスクあたり$5.46という費用が載っている。一方、検索結果ではmax設定で約$7.60という報告もあり、数字が食い違う。設定や測定時点の違いの可能性があるが、どの設定の値かは確認できていない。単価の下落(例: 約90%安い)とタスク費用の下落(例: 75%安い)を混同した二次報道も見られる。本文の数値は単価とタスク費用を区別して読む必要がある。
未検証の情報
次の内容は、一次ソースで裏取りできていない。数字を引用する場合は未検証と明記すること。
- Haiku 5.5がArtificial AnalysisのIntelligence Indexで43点(13位)で、tokens/secが同社の測定中で最速という報道。AAのHaiku 5.5ページに到達できず、二次情報のみ。
- Sonnet 5.5が1タスク約19.3万出力トークンで測定中最多、推論レベルによってタスク費用が18倍超変動する、maxではOpus 5.5 maxより高くなるという報道。AAのSonnet 5.5ページにはタスクあたりの出力トークン数は載っていなかった。
- Sonnet 5.5(9月28日)とOpus 5.5(9月22日)の公開日は、今回の取材範囲では一次で確認していない。
なぜ重要か
軽量モデルの単価が10分の1になり、同時に推論レベルを選べるようになったことで、費用は「どのモデルか」と「どの深さで考えさせるか」の二変数で決まる。Anthropicの公式発表が示す変化は、単価とキャッシュ価格の引き下げ、effort設定の追加という、費用の自由度を増やす方向だ。実運用では自社のタスクで推論レベル別の出力量と費用を実測し、1タスクあたりで比較するのが確実である。